スペシャルティコーヒーと最高のひとときを提供する「Kameino Coffee」~人と人が支え合う社会をさりげなく実現する空間
藤沢市亀井野の住宅街に突如現れるスペシャルティコーヒー専門店「Kameino Coffee」。こちらのお店は2021年4月にリニューアルオープンしたばかりとのこと。なんでもその際に、「世界最高峰のコーヒーロースターをつくる」ことを掲げてクラウドファンディングをしたところ、目標額の倍以上の支援が集まったとか。
そして、気になることがもう1つ。この店舗、住居・コミュニティスペース・医療拠点が一体となった「ノビシロハウス」というソーシャルアパートメントにあるのです。
なぜこんなにも多くの支援者がいるのか、そしてなぜこのような場所にスペシャルティコーヒー専門店をオープンさせたのか。そこには、店長でバリスタの山口りょうさんの熱い想いがありました。
コーヒーの奥深さに触れ、楽しむ
「Kameino Coffee」は、生産者、生産方法が分かるスペシャルティコーヒーを自家焙煎で提供するカフェ&ロースターです。コーヒー豆にはとことんこだわっていて、さまざまな産地の豆の特徴を分析し、最高の味わいをつくり出しています。中には、1㎏あたり10万円以上する豆を仕入れることもあるのだとか。
「ちょっと特別な日に貴重なスペシャルティコーヒーをいただくなど、さまざまなコーヒーの楽しみ方が提供できればと思っています」と山口さん。
さらに、同じコーヒー豆でも焙煎方法によって異なる味わいを堪能してほしいと「浅煎り~中煎り」と「中深煎り~深煎り」の2種類で提供しています。
実際に、それぞれの焙煎方法でお店の看板メニューであるオリジナルブレンド「フラワーシロップ」をいただいてみたところ、浅煎り~中煎りではよりフルーティーで爽やかな紅茶のようなすっきり感、中深煎り~深煎りでは心地良い苦みとナッツのような香ばしさと、まったく違う味わいに驚きました。
1杯1杯丁寧にハンドドリップ。フレンチプレスでの提供もしている
コーヒーは2.5杯分ほどで提供。存分に味わうことができる
スペシャルティコーヒーの魅力と出会う場へ
店内では、スタッフの方とコーヒー談義に花を咲かせるお客さんの姿も。「お店に通われる中で、コーヒーに興味を持ってくださったというお客様もいます。そんなコーヒーとの出合いの場になれたらいいなと思っています」と山口さんは話します。
また、コーヒーの楽しみを伝えたいとお店のセレクトしたスペシャルティコーヒーを550円で毎月お客さんのもとへ届けるサブスクリプションサービスも考えているそうです。「実は、この価格設定だと利益はほぼないんです(笑)。ですが、まずはスペシャルティコーヒーを試していただく機会をつくることで、コーヒーという体験を楽しんでもらえたらと企画しました」と山口さん。
ホロホロと柔らかな鶏肉が絶品のチキン薬膳カレーなどフードも充実
仕上げにお客さんの目の前で焦がしをいれるブリュレチーズケーキ。コーヒーに合わせておいしさが引き立つデザートを用意
ソーシャルアパートメントにある「Kameino Coffee」
こだわりが散りばめられたスペシャルティコーヒー専門店ですが、こちらの店舗がある場所が少し特徴的なのです。店舗の隣にはアパートメント、上には訪問看護ステーションがあります。「Kameino Coffee」はコミュニティスペースにあり、中にはランドリーも併設しています。
このソーシャルアパートメントは、人々が支え合って暮らすことを目指してつくられたものなのだとか。高齢者も含め、さまざまな年代の人、そしてソーシャルワーカーが暮らしています。ご近所付き合いを通して、自然に支え合うことができるというわけです。
山口さんは、なぜこの場所に「Kameino Coffee」をつくったのでしょうか。
ソーシャルアパートメントのコミュニティスペースにある「Kameino Coffee」
喫茶店でのほっとする時間を提供したい
それは、山口さんがコーヒーを提供しようと思ったきっかけにつながっていました。山口さんが特別養護老人ホームで働いていたときのこと。利用者の方がインスタントコーヒーを飲んでいる姿を目にした山口さん。
「皆さん、意外とコーヒーを飲まれていたんです。行きつけの喫茶店があってコーヒーを楽しんでいた方もいらっしゃったはずです。そんな普段あった楽しみをなくしてほしくない、そう思ったんです」
“喫茶店にいるかのようにおいしいコーヒーとともに楽しい時間を過ごしてもらいたい”と考えた山口さん。そんなときに、美容師をしている友人が、施設入所などで美容院へ来ることができなくなった方に対してサービスを提供したいという想いを持っていることを知り、共同で会社を設立。出張型のカフェ事業と美容院事業をスタートさせます。
出張型のカフェでは、ただコーヒーを届けるのではなく、テーブルコーディネートなどもして喫茶店さながらの雰囲気を作り出したそうです。
「普段は交流が少ないご利用者さんも混ざって、コーヒーを飲みながらお話をされていました。喜んでくれる方が多くて、嬉しかったですね」と山口さん。
喫茶店には誰もが青春時代の思い出があるはず。そんな日々の楽しい記憶、甘酸っぱい記憶が蘇ったなんて方もいたのではないでしょうか。
出張型カフェとして喫茶店のような空間を演出
人々の心に寄り添う1杯のコーヒー
その後、山口さんは高齢者向け介護福祉施設「あおいけあ」で代表を務める加藤忠相さんと出会い、同施設の2階で事務所兼カフェをオープンさせることとなります。
カフェには介護福祉施設の利用者の方や近所の方が集い、さらには子どもたちが遊びにやってくるなど、地域の人々の居場所へとなっていきます。「1杯のコーヒーを提供する空間がほっとできる場所、集う場所になっている。やっていて良かったと感じました」と山口さん。
現在の店舗が入るソーシャルアパートメント「ノビシロハウス」は、この時に出会った介護福祉施設「あおいけあ」代表の加藤さんが携わっているそうで、こうしたつながりの中で誕生したお店だったのです。
介護福祉施設「あおいけあ」の2階に初めて開いた店舗
地域の人々が交わり、支え合う空間に
移転リニューアルをした新生「Kameino Coffee」はあくまで本物志向のコーヒーショップですが、ソーシャルアパートメントの中で、入居者と近隣住民が交流する場にもなっています。そこには、人と人をつなぎ、心地良い空間を提供したいという山口さんの変わらぬ想いがあったのです。
「Kameino Coffeeはスペシャルティコーヒー専門店としてやっています。でも実は人々をつなぐ場所となっている。地域や社会への貢献って、強く打ち出しすぎるのもなんだか違う気がして…(笑)。皆さんが入りたいと思うお店であることが重要だと思うんですよね」と山口さん。
誰もが“イイ”と思うから利用する。そうした中で自然と支え合いが生まれる環境を設計する、これからの社会の在り方があるように感じました。
こうした山口さんの信念があるお店だからこそ、店舗移転リニューアルにあたってのクラウドファンディングにおいて目標額を大きく上回るなど、多くの支援が集まったのではないでしょうか。これまで、地域の人々をつなげてきた山口さん。その輪は、大きな力となって山口さんのもとへ返ってきたのです。
ナチュラルテイストで誰もがほっとできる空間
ランドリーを併設。さまざまな触れ合いが自然と生まれる
すべての人にコーヒーとともにある素敵な時間を届けたい
今後はオンラインでのコーヒー豆の販売、気軽に楽しめるドリップパックの販売なども行っていきたいと山口さん。「当初のデリバリー事業に通じるのですが、なかなか喫茶店に行けない方々も含めて多くの方においしいコーヒーを届けたいと思っています。いつもとは違うコーヒー、特別なコーヒーとともに素敵な時間を過ごしていただけたら嬉しいです」
焙煎した豆は店舗やオンラインで販売。100g、250gのほか、1杯分の少量サイズも
コーヒーやフードのテイクアウトも行っている。1日のはじまりに言葉を交わす、そんな場所にしたいと山口さん
最後に、山口さんにとってコーヒーとはどんなものかをうかがってみました。「生活を豊かにしてくれるものだと思っています。なくても困らないかもしれない、でもあったほうが充実した日々になりますよね」
コーヒーを通して、人々をつなぎ、たくさんの笑顔を引き出してきた山口さん。これからも、その心温まる1杯のコーヒーを届ける挑戦は続いていきます。
Kameino Coffee
神奈川県藤沢市亀井野4丁目5−9
[営業時間]
7:30~18:00(木曜は~16:00)
[定休日]
不定休(Instagramなどでご確認ください)
[連絡先]
Tel:080-2105-6293
[ウェブサイト]
HP:https://shop.kameinocoffee.com/
Instagram:@kameinocoffee
Facebook:https://www.facebook.com/pages/category/Coffee-Shop/Kameino-Coffee-1652225678139444/
ライター情報
Tomoyuki Yamaga
海のないところに生まれ、海を求めて湘南へ移住。出版社で雑誌編集者として働いた後、フリーランスとして活動をスタート。趣味は、旅行、街歩き、グルメ、ファッション、ダンス、サーフィンなど。暮らしの中のちょっとした驚きやワクワクを届けたい、そんな思いで活動しています。
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