ミシュラン星の輝きが宿る、至福のラーメンを~「麺バル HACHIKIN」
時を置かず、次々と新店がオープン。新たなラーメン激戦区として、にわかに活気づく藤沢エリア。そんな新店ラッシュのなか、惜しくも閉店となった人気ラーメン屋「麺やBar 渦」の跡地に、ひときわ熱い視線と期待を集める新店がオープンしました。それが「麺バル HACHIKIN」です。
「麺バル HACHIKIN」の女将さんとしてお店を経営するのが、大西由美子さん。かつて「渦」に足を運んでいた方ならお分かりかと思いますが、実はこの方は「渦」の店長・大西芳実さん、そしてミシュランで星を獲得し、今や日本で一・二を争う人気を誇る東京・巣鴨のラーメン屋「蔦」の店長である大西祐貴さんのお母さまです。
まずは“バル”メニューで一杯
では早速、ラーメンと行きたいところですが、こちらもやはりウリは、そば前ならぬ“ラーメン前”。まずは生ビールとおつまみ三点がセットになった「よさこいセット(1,000円)」を注文。3種類のおつまみは日替わりで、その時期に旬のものを中心に提供されます。この日は高知の名物でもあるカツオの刺身、きんぴらごぼう、肉じゃがの3品。おつまみはどれも絶品で、とても1,000円とは思えないコストパフォーマンスの良さ。ぐいっとビールを飲み、アテをつまむと今日の疲れがさらりと流されます。
高知の幻の地鶏「はちきん地鶏」
おつまみのもう1品は「はちきん地鶏のたたき」をオーダー。はちきん地鶏とは“日本一人口の少ない村”でもある高知県大川村でとれる地鶏。まだまだその名は知られていませんが、噛めば噛むほど広がる滋味豊かな味わいが絶品。
何でもこのはちきん地鶏は、まだ取り扱っている店も少ない、いわば“幻の地鶏”。女将さんの学生時代の友人の伝手を頼って、直接仕入れている貴重な逸品です。外側は軽く火を通しつつ、中はレアでジューシー。絶妙な調理も相まって、さらにお酒も進みます。
いよいよ、絶品ラーメンが登場!
さて、いよいよ本題であるラーメンに。こちらのラーメンは先述した、ミシュランで星を獲得した巣鴨のラーメン「蔦」の大西祐貴さんがプロデュースしたもの。「蔦でもやろうと思ってもできなかったことを詰め込んだラーメン。隠れコンセプトは“蔦別亭”」とのこと。否が応にも期待に胸が膨らむばかりです。
この日注文したのは醤油ラーメン。スープは、「はちきん地鶏」の丸鶏と高知県純血100%「ケンカシャモ」ガラを贅沢に使用した鶏スープに「フュメ・ド・ポワゾン」というフレンチの技法で旨味を凝縮した鮮魚スープ、さらに乾物を使った濃厚な魚介スープを合わせ、そこに特別なブレンドを施した醤油ダシをプラス。
そして麺ははるゆたかや、春よ恋など数種類のブランド小麦をミックスし、沖縄のぬちマースという塩などで旨味を最大限に引き出した「蔦特製麺」。さらに、地元みやじ豚を使ったチャーシューと、一点の妥協も許さない並々ならぬ素材へのこだわりが一つの丼に凝縮しています。
さて、まずはスープを一口。そして麺をひと啜り。「………」。もはや言葉になりません、いや言葉を必要としません。ただひたすらに、食べる食べる食べる…。本当に美味しいものには、どんな形容も褒め言葉も役不足ではないでしょうか。気づけばスープ一滴も残さず、丼は空。この事実だけで、その美味しさが伝わればいいのですが…。
カウンター席
奥の座敷は子どもも安心
あまりの美味さに、再度来訪
通常ならば、取材は1日で終えるもの。しかし、あまりの美味しさに無理を言って再度取材に出向きました。そこで、前回いただいていないメニューでおすすめの品を聞くと、「田舎風パテ」とのこと。これをおすすめの白ワインと合わせてみます。こちらのワインは、湘南のワインの名店「Rocks Off」が全面的に協力。以前より親しくお付き合いしているというRocks Offの若林さんが厳選したこだわりのワインで、ゆっくりとグラスを傾ける。ワイン好きなら黙ってはいられない至福の時間を堪能することができるのです。
自慢の「田舎風パテ」
ラーメン屋?とは思えぬ本格バルタイム
こうした数々の絶品料理を手掛けるのは料理長の早川さん。イタリアンや地中海レストラン、ラーメン屋などで多くの経験を積んだ後、こちらで料理を任されているのとのこと。ほかにも揚げ出し豆腐やアヒージョなど、多彩な料理がズラリ。ワインに焼酎、クラフトビールなどさまざまなお酒が進むメニューばかりです。
仕込中の料理長・早川さん
醤油と並んで人気の塩ラーメン
さて、本日のラーメンは塩をチョイス。何でも醤油ラーメンと同じくらい人気の高い一品だそう。こちらのラーメンをつくるのは店長の猿渡さん。こちらも同じく蔦の大西祐貴さんが監修したラーメンを、丁寧に仕上げていきます。
まずはスープ、そして麺をひと啜り。「…………」。なるほど、醤油ラーメンと甲乙つけがたい絶品の味。深みのあるダシとキリッと切れの良い塩の旨味で、全身が幸せな気分に満たされます。「食べて美味しいのはもちろんですが、“楽しかった、また来るよ”と言ってもらえる店を目指しています」という猿渡店長の言葉が心に響きます。
見た目の美しさも食欲をそそります!
65歳からの再スタート
さて、店名になっている「HACHIKIN」とは、高知のキップのいい元気な女性のことを表す言葉だとか。もちろん、女将の由美子さんが高知出身であることから、この名前が付けられました。「65歳でまさかお店を始めるなんて、夢にも思いませんでした」と女将さんは笑います。
女将の由美子さんと猿渡店長(左)、早川料理長
しかしそんな笑顔の奥には、まだまだ新しいことに挑戦し続ける男勝りの“はちきん”ならではのたくましさに満ちています。ここには単なる“美味”だけではない、人々を惹きつけるたくましさと優しさが満ちています。みなさんもぜひ、生粋の“はちきん”と触れ合ってみてください。きっとその虜になるはずです。
ライター情報
ユゲヒロシ
鵠沼海岸生まれ、鵠沼海岸育ち。バックパッカーとして世界を旅した後、広告制作会社に。2003年よりフリーランスのライター&ディレクターに。趣味はキャンプ、ロードバイクなど。B・C級グルメ、お酒が大好き。
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