鎌倉・常盤の路地裏に復活。モントリオール式ベーグル専門店「べーぐる もへある」

鎌倉駅から西側へ、バスで10分ちょっとのところに梶原口という場所があります。住所としては常盤や梶原となるこの周辺は、鎌倉にも関わらずこれといった観光名所もない、いたって普通の住宅街。でも何故か近年、店主の人柄が親しまれているコーヒー豆屋の「イマジネーションコーヒー」、“オーガニックでジャンキー”をテーマにしたケーキ屋兼カフェの「ポンポンケークス」、麻婆豆腐で大人気の「かかん」など、わざわざ遠方からも人がやってくるような個性的な店が続々とオープン。いつしか“梶原カルチャー”と呼ばれ、密かな注目を集めているエリアとなっています。

そしてこのエリアに、新たに2020年88日オープンしたのが、モントリオール式ベーグル専門店の「べーぐる もへある」です。今回は、店主の左奈田望さんにお話を伺いました。

地元民の抜け道である、狭い路地裏で

“はっぴいえんど”や“はちみつぱい”の曲が似合いそうな、細くて渋い雰囲気のある路地裏。地元民の抜け道になっていて、日中は通行人がひっきりなしに通る道でもあります。
「べーぐる もへある」は、そんな路地裏にある民家を店舗へとリノベーションしたお店。

内装を手がけたのは、鎌倉・二階堂を拠点に活動する「アトリエ ニエフ」。素材を組み合わせたプロダクトづくりが得意な「アトリエ ニエフ」らしく、店内は、木材やガラスが巧みに使われていて、爽やかで温かみのある空間となっています。

  • 「アトリエ ニエフ」ファンの来客もあるそう

  • 随所に遊び心が感じられる

  • 木材やガラスなどを巧みに使用した店内

  • どこか懐かしい路地裏

モントリオール式ベーグルとは

こちらのお店で提供されるのは、モントリオール式ベーグル。モントリオール式ベーグルとは、カナダ・ケベック州の都市モントリオールで独自に発展したベーグルのこと。卵と麦芽を使用し、塩を入れないで作った生地を蜂蜜入りのお湯で茹でてから焼き上げます。一般的なベーグルよりもリングの形がはっきりして、外側はさっくり・中身はもっちりとなって、ほんのりとした甘みがあるのが特長です。

ユニークなのが、細長いヘラを使ってオーブンから焼かれたベーグルを取り出し、「えいやっ!」と受け箱へと放り投げるところ。この見ていて楽しい気分になれるパフォーマンスも、実際に現地のモントリオールでおこなわれているものだそうです。

  • ベーグルを取り出す作業は、楽しいながらも緊張の一瞬!

「べーぐる もへある」という店名も“モントリオール”に由来していて、左奈田さんが現地での“モントリオール”の発音が“もへある”と聞こえたことから、名付けられたとのこと。

こちらでは、モントリオールでの味を再現するために、カナダ産の上質な小麦粉を使用して焼かれているそうです。看板商品は、ゴマがたっぷりふりかけられた“せざん”と、ケシの実の“ぱぼ”。現地では、この2種類がよく食べられているのだとか。

  • 看板商品は、こちらの二つ

  • 自家製クリームチーズやドリンク等も扱う

留学先で、運命のベーグルに出会う

左奈田さんは、大学時代に短期留学したカナダでモントリオール式ベーグルに出会い、その美味しさや、焼き上げて取り出す際の楽しいやりとりにすっかり魅了されたそうです。

「当初は別の分野への就職を考えていましたが、この出会いをきっかけに、いつかこの“モントリオール式ベーグル”のお店を日本でやってみたいと思うようになりました。」

そこで、再度の留学費用を用意するため、そして将来の開業に向けての経験を積むために、卒業後は都内のパン屋やカフェなどさまざまな飲食店で働いた左奈田さん。二十代半ばで再びカナダへ留学し、一年間は語学をみっちり学び、もう一年間はベーグルのお店で修行をしました。

  • ”熱狂的ベーグルファンTシャツ”や”べーぐるぐらす”などグッズの取り扱いも

  • ベーグルは通販サイトからも購入可能

鎌倉の日常風景に魅せられて

帰国後、どこでお店をやりたいかと考えた時に思いついた場所が鎌倉。かねてから一人旅で何度も訪れていて、自然豊かで個性的なお店が多いのがとても気に入っていたそう。

鎌倉の家賃が高そうだと考えて、まずは常盤にある「鎌倉ゲストハウス」で住み込みのスタッフとして働くことにします。「鎌倉ゲストハウスで働くなかで、観光地ではない鎌倉の日常が感じられる常盤や梶原の周辺に深く魅せられました」と左奈田さん。

その後いくつか鎌倉市内の飲食店を経験するなか、ある日転機が訪れます。それは「鎌倉ゲストハウス」の地下でお店をやらないかとのお誘い。この誘いをチャンスと受け入れた左奈田さんは開店を決意し、2018年、モーニング限定の“ベーグルを提供するカフェ”として「べーぐる もへある」をオープンさせたのです。

「鎌倉ゲストハウス」での営業は、2019年12月に諸事情で終了しました。しかし、左奈田さんは、今度はカフェではなくテイクアウト専門店として、「べーぐる もへある」をすぐ近くの路地裏に開店することにしたのです。そう、今あるこのお店は、新規開店ではなく復活したお店。電気オーブンから特注の石窯ガスオーブンに変えるなど、約半年ほどの準備期間のなかで随所にパワーアップが施されて生まれ変わった“リニューアル店舗”なのです。

  • 石窯ガスオーブンはオーダーメイドで、試行錯誤を繰り返して作ってもらった

  • お店の守り神として君臨する、実家の愛猫をモデルに制作してもらった招き猫

左奈田さんは、個性豊かなお店が立ち並び独特な雰囲気の“梶原カルチャー”に惹かれ、このエリアに出店することにこだわりました。「ぐるぐるお店周りが楽しくなる、そんな地域の輪を繋げていけるお店にしていけたら」という想いがあるそうです。

オープン初日には、ご近所さんや復活を待ちわびていたファンが訪れて、ベーグルは連日完売に。ベーグルが美味しいのはもちろん、8月8日(輪ハハの日)にオープンだけあって、いつもにこやかに応対してくれる店主左奈田さんのまとうハッピーな雰囲気もとっても魅力的です。楽しい気分に浸れるお店に、ぜひ一度足を運んでみて下さい。

  • ハッピーオーラが半端ない店主の左奈田さん

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