大正14年創業。ドイツ兵との運命的な出会いが生んだ、茅ヶ崎手造りハム「ハム工房ジロー」。

EU諸国やアメリカなどと比べて、食品添加物の許可種類が圧倒的に多い日本。今や、コンビニやスーパーなどで手軽にお弁当やお惣菜を買うことができ、年間の食品添加物摂取量は8kgとも言われています。

ガンやアレルギーの原因としても疑わずにはいられない食品添加物。それらを極力使わず、100年余りハムやソーセージを手作りしている「茅ヶ崎ハム工房ジロー」。以前、ご紹介した湘南のホットドッグ専門店「Umie」のジャーマンヴルスト(ソーセージ)も作っています。

茅ヶ崎青果市場の敷地内に佇む、ハム工房ジロー。

JR茅ヶ崎駅からバスで5分(徒歩15分)、茅ヶ崎青果市場内にある「ハム工房ジロー」。一般の人はなかなか足を踏み入れづらい場所ですが、「とろ煮豚」や「ジャーマンヴルスト」の出来立て時間を知らせる看板に誘われ、敷地内に入ってみました。

昭和のレトロ感漂うアーケードのような建物に本社、工場、店舗を構えるハム工房ジロー。ハム、ベーコン、ソーセージ、トロ煮豚・焼き豚・黒毛和牛コンビーフのオリジナル商品などが約50種類も。茅ヶ崎土産や贈答用にはもちろん、出来立てのジャーマンヴルストやホットドッグを片手に茅ヶ崎散策もいいですね。

先代の“食への探求心”が引き寄せた、運命的な出会い。

1914年(大正3年)、第一次世界大戦の最中、日本軍の攻撃により中国・青島は陥落し、多くのドイツ兵が捕虜として収容されました。その中には様々な職人がおり、ソーセージ、洋菓子、コンデンスミルクなど、ドイツの文化が日本に伝わるキッカケに。解放された後も日本に残ったドイツ兵の一人が、ソーセージ職人のカール・ブッチングハウス氏です。

先代・矢島八郎さんは、大正14年に横浜・本牧で精肉業を創業。カール氏が作った東京・目黒のソーセージ工場にも豚肉を納め、そこで見たハム・ソーセージ造りに心を揺さぶられたそうです。強い“食への探求心”から、見よう見まねで試行錯誤を繰り返す毎日。その努力とカール氏との信頼関係が実り、ついにその技術を直伝されるまでになったそうです。

カール氏直伝の技を頑なに守り続けて100年余り。

カール氏から受け継いだ伝統的なドイツ製法の特色は、「長期自然漬込み」と「直火式スモーク」。「機械化が進み、保存料や化学調味料などが多用される現代に、ここまで昔ながらのやり方を貫いているのは、世界中どこを探してもいないのでは?」と笑顔で語るのは、父・八郎さんの元で修行を積み、2003年に独立した二代目・矢島二郎さん。

「調味料はアルプスの岩塩と三温糖、微量の発色剤のため、とにかく素材が命。品質が良くない肉は業者に返品することもあります。」と言う、二郎さん。神奈川県産の良質な豚肉を部位ごとに“手作業”でカット。塩漬液に2週間以上じっくりと漬け込み、充填し、手巻きに。桜チップを燃やす直火式スモークによって燻煙処理します。

子どもにも安心! 保存料、増量剤、化学調味料を使わないハムやソーセージ。

市販のハムやソーセージには、直接塩漬液(リン酸塩など)、結着剤、保存料、増量剤、化学調味料など、多くの添加物が使われています。ハム工房ジローでは、昔ながらの製法を守り続け、岩塩、三温糖、微量の発色剤(※)のみを使用。発色剤を使わない無添加のラインナップもあるそうです。

※昔、西洋ではボツリヌス菌の繁殖を抑える目的で使用されており、結果として発色剤となったそうです

製造過程で余分な水分を除くため、「肉本来の美味しさ」を味わえるハム工房ジローの商品。そのままはもちろん、料理にも大活躍します。人気NO.1の「黒毛和牛コンビーフ」で筆者が作った「コンビーフカレー」は、じっくり煮込んだ風のビーフカレーに。今、話題沸騰中の「コンビーフ卵かけご飯」にも挑戦! 卵の黄身とコンビーフが醤油と相性抜群、家族で堪能しました。他にもオムレツ、炒め物、トーストなど、アイデア次第で楽しみ方は広がります。

“本物の味”を、次世代の子どもたちへ。

戦争で横浜・本牧から疎開先としてやってきた茅ヶ崎で、今もなお伝統の味を作り続ける二代目・二郎さん。「これからを担う子どもたちには、添加物に頼らない“本物”を食べてほしい。安心と信頼、この製法を次世代につなげていきたい。」と語り、三代目・慎介さんにその味を受け継いでいます。

ドイツ兵・カール氏と先代・八郎さんの運命的な出会いから、100年余り。二人の絆を紡いできた「ハム工房ジロー」。茅ヶ崎市の発展と共に、地域に根付いてきた工房に、絶品ハムとソーセージを味わいに来ませんか。

  • 二代目・矢島二郎さん(左)、営業の上田哲也さん(右)

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