毎日の買い物で海を救う! プラスチックフリーの量り売り「エコストア パパラギ」

今年5月、藤沢の駅前にオープンしたエコストア パパラギ。白い内装がさわやかな店内に足を踏み入れると、透明の瓶がずらりと棚に並んでいます。瓶に入っているのは、茶葉やナッツ、洗剤など地球と人にやさしい生活品の数々。それぞれの商品には丁寧な説明書きが添えられ、生産者の顔や想いが見えてきます。この中から使う分だけ、好きな容器に詰めて購入することができる、量り売りのお店です。

量り売りは、欧米やオーストラリアなどの環境先進国では、すでに普及している販売スタイル。パパラギでは、オーガニックやフェアトレードなどの選定された商品を揃えていますが、決して値段が高くないのも特徴。

「どんな良い商品でも、多くの人の手に渡らなければ意味がない。生活者が購入しやすいか、使いやすいか、という視点を大切にしたい」と考える、店主ご夫妻のこだわりです。

今日は、お店の成り立ちやここで展開する商品について、店主であり環境活動家の武本匡弘さんにお話を伺いました。

海から見えたこと

実は武本さんは、30年来のプロダイバー。国内外の海に潜り続けてきた中で、近年はその異変に気付くことも多くなりました。ふだんは近海で潜るため、その変化がどれほど沖へも広がっているのか気になり、約4年前から太平洋を航海し、海洋環境や気候変動の影響を観察するようになりました。

まず衝撃を受けたのは、海の真ん中に浮かぶプラスチックごみの多さ。そしてこれらが漂流してミクロネシアの島々の美しい砂浜に打ち上げられている姿です。さらにミクロネシアに上陸し、マーシャル諸島やパラオ共和国の大統領に面会した折には、彼らが目の当たりにしている気候変動の影響を見聞きします。自然の中で暮らす彼らには、つぶさに変化が見て取れるのです。それは、武本さんご本人も航海中に肌で感じていた気候の驚異的な荒さ、次から次へと変化する様です。

  • パラオ、ペリリュー島ビーチ。カラフルなマイクロプラスチックのゴミ山。(Photo : 武本匡弘)

この状況に強い危機感を覚え、全国で海洋汚染を伝える講演を行うようになります。講演会で各地の人々と交流するうちに、より生活者に近い場所で「何が海を壊しているのか、地球を壊しているのか」伝える必要があると思い、エコストアのオープンに至ります。

もともと武本さんがプロのダイバーになったのも、多くの人が海や自然に目を向け、自然から読み取る力を養えるように、と思ってのことでした。「海に寄り添って生きていれば、地球を大切にするはず」武本さんは暖かい表情で言います。

しかし、武本さんが海に潜ってきた40年の間も環境問題が好転しないのには、経済中心主義の社会システムや政治、メディアの力などが働いている、と言います。そしてこれを変革できるのは、生活者ひとりひとりの力だと考えたのです。

消費を選びなおす

エコストア パパラギをはじめて訪れるお客さんは、戸惑う方も多いのだとか。自分で測って買う、というスタイルには慣れていないし、中には玄米を精米したことがない方もいます。しかし、このように自分の手を使えば、パッケージされた商品を買う必要はなくなる。お気に入りの容器を見つけてキッチンを飾り、100円の珪藻土ブロック(リユーザブルな乾燥材)でフレッシュに保存できる。

体験することで常識を疑い、現代の安価な大量生産や過剰包装など消費の裏側にも目を向け、暮らしを本質的に見直すきっかけになる、と考えます。

また、地球と人にやさしい暮らしを志す人同志の出会いや交流の場として、機能していくことにも期待しています。そのような場づくりを活性化するため、映画の上映会や講演会などを行っていく予定だそう。

  • 収獲後、大量に捨てられてしまうバナナの茎の繊維をバナナペーパーに加工したプロジェクト。学校の卒業証書や名刺などの利用を提案しています。

  • 環境対応型の浄水器。水筒を持ち歩けば、お買い物中に美味しく安全なお水をリフィルできるウォーターステーションです。

さらに店舗の内装は、漆喰に覆われ化学物質がほとんど使用されていません。新築の戸建てではなく、テナントビルの一階部分なのだから、驚きです!店舗の一角では、このようなアレルギーフリーや自然素材だけを使ったエコ住宅の建築やリフォームが相談できる不動産事業の窓口も設置しており、暮らしの提案を広げます。

毎日の「買う」という行動から、環境のためにできることがある。エコストア パパラギからのポジティブなメッセージが感じられます。ぜひ気になった方は、お買い物やイベントに出掛けてみてください。

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