若き天才の傑作、進化型の神奈川淡麗系ラーメンで舌鼓!~53’s Noodle
日々、新たなラーメン店がオープンする湘南・藤沢エリア。先ごろご紹介した「HACHIKIN」に続き、またしても話題性十分のお店が湘南台にオープンしたのをご存知でしょうか? そのお店は「53’s Noodle(ゴミズヌードル)」。6月13日の開店当日から早くも大行列、今もなお行列が絶えない人気店にようやく伺ってきました。
知る人ぞ知る、ラーメン界の若きエース
53’s Noodleの店主・五味辰也さんは“若き天才”と評される、ラーメン業界では知る人ぞ知る存在。こちらを開店する前は、町田のラーメン店「天国屋」のエースとして腕を振るっていました。そんな五味さんがおすすめするラーメンを早速いただくことにしました。
注文したのは一番人気の醤油そば。接客時の穏やかな笑顔とは打って変わって、鋭い眼光をたぎらせながら、手慣れた手つきで一杯のラーメンを作っていくさまには一切の無駄がなく、まさに熟練のラーメン職人そのもの。
真剣な眼差しと、流れるような手さばき
あまりの美味さに完食&完飲!
できあがったラーメンを一口いただくと、昆布と煮干しのしっかりとした和風出汁ベースに、鳥の旨味がぎっしりと詰まった濃厚で重層的な味、そしてキリッと切れの良い醤油の味と香ばしさに包まれます。麺はやや角が立った中太の平打ち麺で、適度にスープを絡ませながら、滑らかな舌触りでするすると啜れる気持ちよさです。
そしてチャーシューは、低温調理でしっかりと味を引き出し、柔らかい歯ごたえながらも噛むほどに味わいが膨らむ逸品。厚みもしっかりとあるので、食べ応え十分です。
一番人気の醤油そば
笑顔もステキな五味店主
掛け算で生む、絶妙な味
事前の情報では“淡麗系ラーメン”と聞いていたこともあり、もっとあっさりとした味をイメージしていたのですが、いやいや大違い。一つひとつの味がしっかりとして、かつ奥行きのある深い味わいに驚きます。「いわゆる淡麗系というと、昆布も煮干しも鶏も数種類使って重層的で複雑な味にするのが主流ですが、私はすべての素材で1品しか使いません」と五味さん。
「複数の素材を使うとまとまりを欠く気がします。それよりも一つの素材の味を極限まで引き出して、それをほかの出汁と組み合わせて味を広げることを心がけています。無闇に味を増やしていく“足し算”ではなく、究極の味を組み合わせていく“掛け算”で作り上げています」(五味さん)。
“情報を食べず”に本質を味わってほしい
そんな話の中、ついつい聞きたくなるのが「素材の産地は?」「素材へのこだわりは?」といった質問。しかしそんな質問にも「特に○○産昆布だとか、○○地鶏だとかにこだわっていません。いいものは使っていますが、ブランドにはこだわりません。」と五味さん。「そういった味以外の情報は必要ないと思うんですよね。食べる前から“これは○○を使ったスープで…”とか、固定観念にとらわれて欲しくない。手軽に食べて、『あー、美味しかった』。それだけでいいんですよ。」
とかく“情報を食べている”などと言われているグルメ業界ですが、“自分の舌で美味しいと思ったものを、美味しく食べる”という基本的なことを、改めて教えられた気がします。
藤沢の共同キッチン「NEKTON」で修行も
さて続いてもう一杯、味噌そばも注文。こちらは味噌以外にもカレーに用いられるクミンやコリアンダー、パプリカなどのスパイスを使用しているのがポイント。しっかりとした和風出汁にコクのある味噌とスパイスが醸す風合いが絶妙にミックスした、何とも独創的な一杯に仕上がっています。
実はこのスパイスにもちょっとしたストーリーが。天国屋での修業時代、週一ペースでオリジナルメニューも任されるなど、メキメキと頭角を現していた五味さん。そんな時にふと出合ったのが、藤沢にあるコワーキングスペース「NEKTON」。そこには日替わりでキッチンを貸し出しているスペースがあり、昼と夜で日々異なる料理人が腕を奮うシェアキッチンとして活用されています。五味さんは2年半もの間、そこで毎週金曜日の夜にラーメンを提供。何と1日で最高60杯も記録するほど、人気を博していました。
「今の自分の店を持つうえでも大変勉強になりましたし、料理人はもちろん、さまざまな人とも繋がりを持つことができました。」と五味さん。味噌そばに使用しているスパイスは、このNEKTONで知り合ったカレー屋さんから仕入れているのだそうです。
味噌そば
また、このお店のもう一つの魅力は、日替わりメニューの数々。その日に仕入れたもので、さまざまな創作ラーメンを提供。この日は公式には「冷ニボ」との看板がありましたが、何やら常連さんに出したのは、メニューにない一品「痺辛麻婆麺」。
「まあ、シェフのきまぐれラーメンみたいな感じですかね。」と笑う五味さん。そんな探究心と遊び心こそが、美味しいラーメンを作り続ける秘訣なのかもしれません。
店頭の立て看板は「冷ニボ」だが…
思い付きで作った「痺辛麻婆麺」
「ラーメン屋を応援したい!」
そんな五味さんに将来の展望を聞いてみると「まずはここ、湘南台で地域に根付いた愛される店になること。将来的には“コンサルタント”といっては偉そうですが、もっとほかのラーメン屋さんを応援できるようなこともしたいんです。」(五味さん)
何でもこのラーメン業界に入る前は、家業である建築関係の仕事を継ぎながら大好きなラーメンの食べ歩きをしていた五味さん。長男ということもあり、“ラーメン屋をやりたいな”とは思いながらも、その夢をかなえるのは難しかったそう。しかし、さまざまな事情が重なり、家業を畳むことになったのだとか。そこをきっかけに、あきらめていたラーメン屋への道が開けたといいます。
「私自身がそうだったように、みんな色々な苦労をしてラーメン屋をオープンし、開店後も色々と悩みを抱えていると思うんです。そんな人たちを手助けをしたい。自分が美味しいラーメンを作ってお客様に喜んでもらうのと同じく、美味しいラーメン屋がもっと増えてほしいんです。」と五味さんは語ります。
最後にこんなことも聞いてみました。「若き天才と呼ばれるプレッシャーはありますか?」。その問いには「ラーメン界に天才と呼ばれる方、例えば飯田商店(湯河原)の飯田さんや、鴇(藤沢)の横山店主などいらっしゃいますが、そういった方々は並々ならぬ努力を重ねていて、到底自分がそこに肩を並べられているとは思っていません。ただ、そう言われて期待されることは嬉しいですし、それに恥じないように努力しようと思います。」と、面映ゆそうながらやりがいを感じている様子です。
まだオープンしたてながら、近い将来には湘南や神奈川というエリアを飛び越え、必ずや全国に名を轟かすであろう53’s Noodle。ネクストスタンダードとして、“進化型”の神奈川淡麗系ラーメンをぜひ、自分の舌で味わってみてください。きっと、ちょっとした驚きの後、至福の喜びに包まれるでしょうから。
ライター情報
ユゲヒロシ
鵠沼海岸生まれ、鵠沼海岸育ち。バックパッカーとして世界を旅した後、広告制作会社に。2003年よりフリーランスのライター&ディレクターに。趣味はキャンプ、ロードバイクなど。B・C級グルメ、お酒が大好き。
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