歴史グッズの店「侍気分」で味わう武士の街・鎌倉の魅力
鶴岡八幡宮へと続く若宮大路沿いに、気になるネーミングのショップがあります。鎌倉時代~幕末にかけて活躍したお侍さんや出来事をイラストにしたグッズを販売する「侍気分」です。
歴史の一瞬を切り取ったユーモラスなイラストは現代の私たちに何か訴えてくるものがあり、店主・小西竜介さんが話す一つひとつのストーリーにはぐっと引き込まれるものがあります。
歴史に興味のある方はもちろん、観光で訪れた方も鎌倉をより深く知ることができる、とっておきのスポットとなっています。今回、歴史愛に溢れる小西さんに、その魅力と歴史を知る楽しさについてうかがってきました。
「侍気分」店主の小西竜介さん
興味を掻き立てる歴史話が聞けるお店
店内には、織田信長や徳川家をモチーフにしたTシャツやマグカップ、ショルダーバッグなどが並んでいます。デザインはどれも店主の小西さんのアイデアから生まれたものなのだとか。
デザインにまつわるストーリーを小西さんのユニークな切り口とともに聞いていると、あたかもその時代にタイムスリップしたかのように想像が膨らみます。まるで講談師のような語りに引き込まれる方は多く、観光客の方だけでなく、歴史が好きな方も小西さんのお店を訪ねてやってくるそうです。
鶴岡八幡宮近くにあるビル1階の奥まった所にあるお店
歴史から今を読み解く面白さ
鎌倉で育った小西さん。以前は、都内の証券会社で法人向けの営業を担当していたそうです。取引先に日本に住む外国人も多かったことから、日本の歴史を紹介することや東京の寺社を案内することもあったのだとか。
もともと歴史が好きだったという小西さんですが、外国人にもわかりやすく説明するために本を読み理解を深めていくうちに、その奥深さにますますはまっていったとのこと。
「点と点でバラバラになっている出来事を何百年という単位で見ていくと、そこから物事が変化していく様子をうかがい知ることができます。現在は一瞬で出来た訳ではない、過去とつながる瞬間があるんです」
例えば最近話題になることも多いLGBTについても、時代とともに人権を意識するようになった流れがあると小西さんは話します。
「中世は自力救済の社会で、自分の身は自分で守るのが原則でした。それが時代とともに人権が意識される風潮が高まり、例えば現代に向けてより人の権利が守られた訴訟システムが整えられてきました。過去のいろいろな事象をつないでいくと人権獲得の歴史の流れが見え、その長い道のりを理解しながら今と比較するのが面白いんです」
歴史の魅力を楽しく伝える小西さん
お店にある小西さん愛読の歴史書の一部
武家社会の源をまじかに見られる場所での開店
歴史を調べれば調べるほど一般的に知られていない興味深いストーリーがあることに気づき、そうした史実をもっと多くの方に知ってもらいたいと考えるようになった小西さん。
証券会社退職後、歴史上の出来事をモチーフにしたマグカップやTシャツを作り、ネットで販売するように。お客様の反応も良かったことから、さらに広げていきたいと、ついにはお店をオープンさせるに至ったのです。
お店の前には、鎌倉幕府の名執権として活躍した北条泰時の屋敷跡が遺構として保存されています。「ここは封建社会のはじまりとつながる場所で侍の心の源流でもある。お店はここしかない」と思い、この場所に決めたのだとか。
お店の横にはビルの設備として設置されている鎌倉幕府の歴史を書いた案内板
モチーフは川中島の合戦の武田軍がひいた鶴翼の陣(紺色)と上杉軍の車懸りの陣(グレー)
「一本のネジ」で日本の近代化を促した小栗上野介のグッズ
関ケ原の合戦(東軍・西軍)の武将たちの家紋のポーチ
武家社会の始まりを感じ、歴史を辿る贅沢
鎌倉は言うまでもなく源頼朝が日本史上はじめてとなる武家政権を確立させた土地です。ここから武士が日本を統治する世の中がスタートし、それ以降江戸時代が終わるまで約700年もの間、武士の世が続きました。
足元を2~3m掘るとたいてい遺構が見つかるという鎌倉ですが、若宮大路沿いや材木座周辺などでは、調査をしても終わるとすぐに土をかぶせるため、ほとんどがその跡を見ることはできません。それが唯一保存されている場所の目の前でお店ができるのがとても嬉しい、と小西さんは熱気あふれる口調で語ります。
お店の前にある北条泰時の屋敷跡の遺構
北条泰時の屋敷跡の貴重な展示
商品から歴史に触れる楽しみ
鎌倉の武家社会にまつわる物語を伝えたいという小西さんの想いは、店内の商品に込められています。例えば、鎌倉御家人の団結を描いたのが「北条政子の演説Tシャツ」。
――承久の乱は鎌倉幕府を好ましく思わなかった京都の朝廷が、当時の幕府執権・北条泰時追討の宣旨を発令したのが引き金でした。鎌倉で動揺する御家人たちを発奮させるように北条政子が源頼朝の恩恵を訴え、この演説によって団結を強めた幕府軍は勝利を収めたともいわれています。
演説での「頼朝様があなた方に与えた恩恵は山よりも高く、海よりも深いのです」という政子の言葉が歴史を動かした瞬間を、親しみのあるデザインで伝えているのだとか。
店内の商品1つ1つに物語が込められており、その物語を小西さんにうかがう時間こそが、このお店の楽しみなのです。
北条政子が演説する史実にもとづいた感慨深いTシャツ
鎌倉で侍に想いを馳せる
美食の街と呼ばれ、お洒落な雰囲気の漂う鎌倉。ただ、やはり歴史の街というところに大きな魅力があるのではないでしょうか。
街には、歴史を今に伝える沢山の史跡などがあります。そうした場所を訪ねる際に、この「侍気分」を訪れて小西さんにお話を聞いてみるのもいいかもしれません。
小西さんおすすめの鎌倉の史跡は、源頼朝の墓のそばにある大江広元、毛利季光、島津忠久の墓とのこと。例えば一般的に毛利家の本拠地は山口県と知られていますが、これは鎌倉時代に人の移動が活発にあったからで、もともとは鎌倉に近い厚木が毛利発祥の地なのだそう。鎌倉周辺にいた頼朝の御家人たちが全国に散らばり、そこで土着してその土地の名前を名乗るようになったことが御家人たちの苗字からも推測できるといいます。こうした史実を知ったうえで、観光すると楽しみがより広がりそうです。
歴史をつくった戦国武将、その始まりの地であった鎌倉。「侍気分」で、小西さんとともに歴史の世界に浸ってみるのはいかがでしょうか。
キャップをかぶって御家人気分で鎌倉散策へ
史跡めぐりに城の防御する仕掛けを描いたTシャツはいかが
侍気分
神奈川県鎌倉市雪ノ下1丁目12-5 M's Ark kamakura1F
[営業時間]
10:30~17:00
[定休日]
不定休
[連絡先]
Tel:080-2259-1173
[WEBサイト]
HP:https://samuraikibun.com/
Twitter:https://twitter.com/samuraikibun
ライター情報
Mayumi Takahashi
旅行ガイドブックで鎌倉や江の島など湘南エリアを紹介しているライターです。大地の恵みを吸収した彩り豊かな鎌倉野菜が大好きで、鎌倉に行くと駅前にあるレンバイに立ち寄って旬の野菜を購入するのがルーティーンになっています。
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