茅ヶ崎のはじっこから。新しい文化を発信するパン屋さん「柳島カルチャー」

茅ヶ崎市の平塚寄りの端に位置する中島。駅から遠くてバスで行くにしてもちょっと不便な場所にもかかわらず、たくさんのパン好きの心を捉える「柳島カルチャー」があります。

パンだけではなく、Tシャツやステッカーなどお店のオリジナル商品も好評というちょっと変わったパン屋さん。店主の帖佐さんに、店名の由来や気になることをあれこれ聞いてみました。

偏食気味な子どものために始めたパン作りがきっかけでこの道へ

帖佐さんは、東京を中心に舞台などに出演していたという元役者さん。なぜ、パン屋さんという道に進んだのでしょうか。

「長男が離乳食も食べられないくらい偏食だったんですけど、パンだけは食べることができました。そこで、家に置いてあったドライイーストを使ってパンを焼いてみたら子どもが食べてくれて、それをきっかけにパン作りをはじめました」

図書館の本を参考に、自家製のレーズン酵母をつくりはじめたという帖佐さん。自家製酵母によるパン作りの奥深さに惹きこまれていきます。
その後、辻堂のパン屋さんで2年半働き、2018年3月に柳島カルチャーをオープンしました。

  • 帖佐さんご夫婦

お店の名前の由来とこの場所を選んだ理由

お店の所在地は茅ヶ崎市中島なのに、お店の名前は柳島カルチャー。「所在地は茅ヶ崎市中島になるのですが、柳島という言葉の響きがなんとなくキャッチーだったので……カルチャーの部分は、受け取る側の人が自由に解釈してくれたらと思います」と帖佐さん。

「家から通える範囲で箱みたいな工場がいいなというイメージがあり、この場所はそのイメージにぴったりでした。あと、独立するまえに働いたお店で一通りパンの作り方を教えてもらい、そのうえで自分で作りたいと思うパンがあって、お店をやりながらのんびり追求したいと。なので、立地はあまり気にしていませんでした」

立地が悪くても自分が作ったパンを愛してくれるなら遠くからでもお客さんは来てくれるだろうという思いもあり、この場所にお店をつくることを決めたそうです。

  • お店の入口に飾られた観覧車のオルゴール

Tシャツやステッカーなど、気になるお店のオリジナルグッズ

柳島カルチャーでは、ステッカーやエコバッグ、Tシャツなどのオリジナルグッズも販売しています。胸元にお店の住所が書かれたTシャツは再入荷となるほどの人気商品。

イラストを担当しているのは、役者時代のご友人だという古関昇悟さん。ちょっとシュールなテイストが味わい深く、人気があるのも納得です。

  • 不思議な魅力をかもし出すTシャツ

  • お店の近くの道路にある案内も古関氏のデザインによるもの

パンのあるくつろぎの空間

お店の奥には、キッズスペースがあります。日曜日には帖佐さんのお子さんも子ども店長として滞在することも。親御さんは子どもが遊んでいる間にゆっくり買い物することができます。

「高価なものや特別なものではなく、日々の生活の中で必要なものを直売所で買うような感じで自分のパンを売りたかった」と帖佐さん。

八百屋さんを参考にしたというパンの陳列とあわせて、ポストカードや書籍が並ぶ店内はくつろぎの空気で満ちあふれています。

  • お店の入口には休憩できるスペースがあります

  • お店の奥にはキッズスペースがあるので、子ども連れのママも安心

  • お子さんが描いた看板

  • 毎月発行される手作り新聞

すべてのパンは、パン作りをはじめた当初から継ぎ足してきたレーズン酵母を使用しています。自家製の酵母と国産小麦粉で作られたパンは、まさに帖佐さんの想いがつまったような味わい、石窯で焼き上げられ、表面は香ばしく中はふっくら。子供からお年寄りまで幅広い方に喜ばれています。

  • 手書きのキャプションにはパンのことが詳しく紹介されている

  • クリームぱんは子どもたちに人気の商品

レジ横で販売している、bairdbeer(ベアードビール)はご夫婦が実際に試飲して厳選したもの。噛みしめるほど香ばしい酸味のある柳島カルチャーのパンは、お酒によく合います。イートインスペースはありませんが、お店にある椅子は自由に使っていいそうです。

  • 伊豆に工場を構えるbairdbeer

出会いの中で生まれたものを形にしていきたい

さまざまな地域で開催されているマルシェへの参加にも積極的。お店の近所で行われる『なんどきマルシェ』には毎月出店しています。

「地域の方、常連さん、もちろんお店が一番大切だけれど、裾野緒を広げていけたらと思って参加しています。パンを作って、この場所を大事にして、出会いの中でうまれたものをかたちにできたらいいなと思っています」と帖佐さん。

人との繋がりから新しいカルチャーが生まれていく。店名の「カルチャー」はそんな理由もあるのではないかと感じました。

最後に、これから新たに挑戦したいことを聞いてみました。

「実は、妻には3つの願いごとがあって、そのうちひとつだけ叶っていないことがあるんです」。奥さんの3つの願いとは、パン屋さんをやりたい、新聞を作りたい、ラジオをやりたいということ。最後のラジオだけがまだ叶っていないそうです。

丁寧に着実に夫婦で一緒に叶えていく夢。もしかしたらパン屋さん初のラジオ番組を持つことも!? 柳島カルチャーさんならやってしまいそう。これからも、新しい文化を発信するパン屋さんとして注目していきたいと思います。

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