藤沢宿の名残が薫る、旧くも新しいベーカリーカフェ 「関次商店 パンの蔵 風土」
次々と新たなパン屋さんがオープン。さらに新食感の食パンが大きな脚光を浴びるなど、今や一大ブームを起こしているパン・ベーカリー業界。その風潮に乗せるように、「関次商店 パンの蔵 風土」が2019年1月、藤沢にオープンしました。
そんな話を聞きつけて早速お店へ訪れてみると、その店構えにビックリ! 何しろこちらのお店は、1886年に建てられた旧東海道藤沢宿にある国の登録有形文化財「関次商店の穀物蔵」をリノベーションして造られたもの。その風格と歴史を感じさせる佇まいにひたすら圧倒されます。
とてもパン屋とは思えぬ佇まい
店の入り口はまさに蔵そのもの
レトロモダンな雰囲気溢れる店内
まず店内に入って驚くのはその天井の高さ。さらに、かつての蔵の名残である土壁などはそのまま残しつつ、随所に新たな木が張られてモダンにリニューアルされた雰囲気は、古さと新しさが入り混じった何とも言えない雰囲気に満ちています。
所狭しと並べられる、焼きたてパン
そんな雰囲気のある店内に置かれた、長テーブルの上には今焼かれたばかりのパンがずらりと並び、焼き立てならではの香ばしさに包まれ、何とも幸せな気分に満たされます。
中でも店主の岩田さんが胸を張っておススメするのが、「カンパーニュ」。天然の小麦酵母を使用し、小麦だけで造られたこのパンは、ハード系ならではの歯ごたえと、小麦そのものの味、そして後味に残る微かな酸味が絶品。まさに玄人好みのパンに仕上がっています。
「とにかく酵母にはこだわりました」と岩田さん。小麦酵母のほかには、レーズン酵母やドイツから取り寄せたオーガニックイーストなど、とにかく体に優しい素材にとことんこだわっているのが特徴です。
認可保育園の天然酵母パンに感動して…
そんな岩田さんがパン作りを始めたきっかけは何とも以外で、埼玉の自然派の保育園で働いていた時だという。「その保育園は、子どもの健康を考えて玄米食を提供したり、乳製品を与えないなど、食育にも力を入れていました。そこで食べた天然酵母のパンの美味しさが忘れられず、“こんなパンを作ってみたい”とパン職人を志したのです」(岩田さん)
そこから、渋谷・富ヶ谷や茨城・筑波のパン屋さんでパン修行を重ね、「そろそろ独立して開業しようかな」と思っていた時、この物件と出会ったそう。「当初は埼玉で探していたものの、ひょんなことからこの古い蔵をリノベーションしてお店にという話がありまして。それも面白そうだな…」とトントン話でまとまったと言います。
藤沢市からの補助金も積極的に活用
この蔵のリノベーションに当たっては、大家さんはもちろん、地元日大のゼミ学生、そして地域の人々の協力を得て、できる限り手づくりで行ったという。壁を板で張り直したり、造作でテーブルを造ったり、さらに藤沢市は、藤沢宿エリアを「街なみ継承地区」に指定していたこともあり、同地区に店舗を開業するための補助金を活用した初めての店舗となったそう。「後からそうした補助制度のことを聞いたので、ラッキーでしたね」と岩田さんは語ります。
お店は、夫婦二人三脚で
店内にはイートインスペースもあり、こちらで買ったパンを食べることもでき、さらにカフェ営業も行っています。そのカフェを担当するのは奥様の佳奈さん。富ヶ谷のベーカリーでもカフェを担当していたそうで、それから夫婦として二人三脚。実に手慣れた手つき香り高いコーヒーを提供してくれます。
気軽に立ち寄れる、休憩所のような場所に
またコーヒー以外にも無料で三番茶も提供するなど、まるで友達の家に遊びに来たような、親しみのある雰囲気もこの店ならでは。「パンを買うだけでなく、気軽に立ち寄る地元の休憩所のように使ってほしいですね」と岩田さん。その言葉通り、まだオープンして1ヵ月あまりにも関わらず、次から次へとお客さんが訪れては岩田さんに気軽に声を掛け、ちょっと腰を掛けて世間話をしていく。そんな井戸端のような光景が繰り広げられています。
午後1時を過ぎると、パンもほぼ売り切れに…
さまざまなパン屋がしのぎを削り、まさにパン・ベーカリー激戦区とも言えるここ湘南ですが、ほかのどこにもない魅力に満ちたベーカリー・カフェ「パンの蔵 風土」のオープンが、さらにパン好きを喜ばせてくれると同時に、ウレシイ悲鳴になることでしょう。
ライター情報
ユゲヒロシ
鵠沼海岸生まれ、鵠沼海岸育ち。バックパッカーとして世界を旅した後、広告制作会社に。2003年よりフリーランスのライター&ディレクターに。趣味はキャンプ、ロードバイクなど。B・C級グルメ、お酒が大好き。
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