“サンゴー”に恋をして。奈良からの湘南移住の決め手は…。〜「 江ノ島電鉄」勤務 降籏理絵さん〜
海を求めて、暮らしを求めて……湘南へやってくる理由は人それぞれですが、彼女のようにストレートで、そして熱いハートを持ってやってくる人は珍しいのではないでしょうか。
奈良生まれ、湘南在住の降籏さん。湘南のアイコンのひとつである江ノ電に心を奪われ、恋焦がれてこの街へとやってきた彼女は、波乱万丈の5年間を過ごしてきました。その足跡を少しだけ追ってみましょう。
初めて訪れた湘南で果たした、運命の出会い。
「旅行で湘南に来たときに初めて江ノ電に乗ったんですけど、その時の車両が305号車で、フカフカの緑のシートとか、木の床にテンションが上がったんですよ。で、そのあとしばらくして海沿いを走り出してまたテンションが上がって、すごく楽しかったんです」
気づけば江ノ電の虜となっていた降籏さんは、やがて「江ノ電で働けたらいいなぁ」と思うようになりました。それからというもの、江ノ電のウェブサイトを毎日のようにチェックしていたとか。そんな折、駅員スタッフの求人が彼女の目に飛び込んできます。
車掌業務中の降籏さん
帽子と手袋もマスト
バレンタインのお返しは、江ノ電から来た幸せの報せ。
「2月14日に書類を出して、奈良から湘南に面接を受けに行ったんですけど、駅員採用時は嘱託でした。でも、面接官の方とお話ししているうちに盛り上がったりして、いろいろと手応えがあったんですね。1時間ほどで面接は終わり、腰越海岸の辺りを歩いていたら“二次面接を行いたいので、お時間ありますか?”という電話がすぐに掛かってきて。『もちろんです』ともう一度お話を聞きに行ったら、“奈良からいらっしゃっていて、正社員ではありませんが、本当に大丈夫ですか?”という確認でした」
友人から贈られた、地元奈良・春日大社のお守り
その後、降籏さんは奈良への帰路に就きましたが、その道中でも江ノ電から電話が掛かってきていたそう。これを受けて友人に相談したところ、「江ノ電で働けるならそれがいいんじゃない?」という声が多く、彼女自身もそれに納得。
そして、江ノ電に「お願いします」と電話をしたのが3月14日のことでした。
“好きなこと”が紡ぎ出す笑顔が湘南から全国へ。苦悩を乗り越え、いよいよ…
はじめの3ヶ月は長谷駅で、そしてその後は腰越駅で2年を過ごした降籏さん。そんな彼女が頭角を現したのは趣味で特技の“絵”でした。
「駅の掲示板とか、イベントのチラシとか、いろいろなところで絵を書かせてくれたんです。好きなことをさせてもらえて私も幸せだったし、お客さまにも喜んでもらえたので、それもまた嬉しかったですね」
「腰越駅」の看板のところで
駅員業務時代を再現
腰越駅の壁面も降籏さんによるもの
降籏さんのサイン入り!
彼女の絵は地元の人々のみならず、やがて全国の江ノ電ファンにも認知されるようになりました。そんなある日、正社員が社内公募されていることを知った降籏さん。さっそく応募し、その後紆余曲折を経て、念願叶って江ノ電の正社員として乗務員デビューを果たしました。
カラフルな色使いがかわいい降籏さん作のチラシ
消しゴムを使ったハンコも
夢を運ぶ湘南の列車を、こんどは自らの手で。
気に入った街に住み、そして働ける幸せを噛み締めている降籏さん。今後の目標は、江ノ電の運転士になること。彼女が湘南に恋したきっかけでもある“サンゴー”(305号)のマスコンハンドルを握るのが夢だといいます。
「湘南は常に風が吹いてるのが印象的ですね」。そう語る降籏さんの表情は、この街に吹くハッピーが形作っていったもの……そんなふうに思えました。
湘南で暮らす人々
都心から電車で1時間と、遠いようで実は近くにある海辺の街。豊かな自然に囲まれて過ごす人々の表情もまた、おなじように豊かです。
本コラム『湘南で暮らす人々』では、この地で生活を営む人々にフォーカス。「やっぱりこの街が好きだ」というみなさん、そして「いつかはここで……」と憧れを持つみなさんと一緒に、多彩なライフスタイルを覗いていきたいと思います。
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※取材協力:江ノ島電鉄株式会社(https://www.enoden.co.jp/train/)
ライター情報
ユゲヒロシ
鵠沼海岸生まれ、鵠沼海岸育ち。バックパッカーとして世界を旅した後、広告制作会社に。2003年よりフリーランスのライター&ディレクターに。趣味はキャンプ、ロードバイクなど。B・C級グルメ、お酒が大好き。
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