SNS映えするルックスを超える感動の美味を~タイ料理「CHAPSTOCK」

数々のエスニック料理のなかでも特に人気の高いタイ料理。パクチーの人気も相まって、新鮮な野菜を用いたヘルシーかつデトックス効果のある料理は、もはや特別なものではなく定番料理となっています。

そうした中、新たなタイ料理店「CHAPSTOCK」が藤沢にオープン。お世辞にも分かりやすいとは言えないビルの2階にありますが、開店からまだ日が浅いにも関わらず多くのお客さんで賑わっていました。

お手並み拝見と思いきや、想像を超える味!

さっそく、一番人気だという「濃厚グリーンカレー」をオーダーします。筆者もタイには何度も行き、本場のタイ料理を食し、さらにタイカレーを自作するほどのタイカレー好き。図々しくも「お手並み拝見」的に料理の完成を待ち受けます。

間もなく届いたタイカレーはパイナップルの形をした木製の容器に入れられ運ばれてきます。「さてさて、どんなものかな?」と一口いただいて正直ビックリ! 今まで食べたことのないほどの濃厚かつ深い味わい。タイカレー特有のサラっとした軽やかさではなく、ココナッツのクリーミーさと奥行きのある味わいが口中に膨らみます。

「ココナッツミルクと水は1:1にするのがタイカレーでは定番ですが、当店では水は使いません」と小玉洋以知店長。さらにココナッツミルク缶を数日冷蔵庫で冷やして、水とココナッツ成分を分離させ、分離した水を捨ててより濃厚になったココナッツ部分のみを使うといったこだわりよう。こうしたこだわりは、小玉さんが師匠と仰ぐタイ料理の料理人・新宮彰さんのレシピに基づいているのだとか。

  • 一番人気の「濃厚グリーンカレー」

レンタルカフェ・長後食堂で修行を重ねる

今から約25年前、とある新宿のタイ料理屋さんでホールを担当していたという小玉さんですが、IT通信系企業に就職し東京・渋谷で働いた後、ここ湘南へ転勤してきたそう。「東京では毎日が本当に忙しく一年一年の記憶がまったくないほどでした。しかし、こちらへ越してきて、平塚の湘南大橋を自転車で渡っていると正面には富士山、左手を見やれば青い海。その瞬間に居合わせただけで、時間の流れがゆっくりになったのを今でも覚えています」。

60歳くらいになったら飲食店をやりたいな…と考えつつも仕事に精を出す中、ある時、自分の好きな曜日と時間だけお店を借りて営業できるレンタルカフェスペース「長後食堂」の存在を知り、いても立ってもいられなくなります。「これなら膨大な初期投資もなくお店が始められ、自分の味が認められるかが挑戦できます。また将来お店を出そうと考えている同じ志を持った方がいるのも、励みにも刺激にもなりました」と振り返ります。

3年間を過ごした長後食堂では、毎週金曜日と土曜日にお店「chap’s」をオープン。当初は集客に苦労したものの、やがては毎食完売。予約必須な人気店となったほど。そこで培ったノウハウを携えて、この度満を持して藤沢にお店を持つことになったのです。

  • 店長の小玉さん

  • グリーンの壁がかわいい店内

洋食のエッセンスが加わった師匠の味を再現

しかし驚くのは、そもそも小玉さんにタイ料理を作った経験がなかったこと。それなのに何故、タイ料理を選んだのでしょうか? 「新宿のタイ料理屋では、現在私が師匠と仰ぐ新宮彰さんが腕を振るっており、当時日本人では数名しかいなかった本場タイの宮廷式で学んだその味に惚れ込んでいました。“ただ純粋にその味を再現したい”と思ったんです」と小玉さん。ホール係で調理経験がなかった小玉さんは新宮さんの著書を元に独学で料理を研究。さらに新宮さんに連絡を取り、レシピを教わりながら料理の監修もお願いしたと言います。

「新宮さんは元フレンチシェフだったこともあり、一般的なタイ料理とはひと味違って、ちょっとフレンチなどの洋食のエッセンスが加わる自由な料理スタイルが魅力なんですよ」と話します。グリーンカレーでのココナッツミルクの使い方は、タイでも宮廷料理などにしか使われない特別な調理法だとか。

ちなみに尊敬する師匠である新宮さんの愛称が“CHAP”さん。そう、このお店の名前である「CHAPSTOCK」とはCHAPさんの料理ストックを提供するお店という意味なんだそうです。

  • テイクアウトも大人気!

  • 料理をいっそう魅力的に見せるカラフルなお皿

インスタ映えを超えて、食べた瞬間に感動のピークを

続いていただいたのが、こちらも人気の「カオマンガイ」。鶏がらのダシで炊いたご飯に大きな蒸し鶏が豪快に乗った一品で、サラダとスープも付きボリュームいっぱい。さらに目を引くのが朱、マスタードカラー、イエローグリーン、ブラウンなど色彩やかなお皿。その鮮やかな色のお皿に盛りつけられた料理は、インパクト十分でさらなる食欲をそそります。

まさにこれぞ“インスタ映え”する料理。SNSで拡散されたこのビジュアルに惹かれて、訪れるお客さんも多いというのも納得です。「正直、インスタ映えは意識しています。けれども感動のピークは、料理を見た瞬間ではなく、料理を食べた瞬間でなければなりません。『見た目はいいけど、味は普通だね…』と言われないよう、日々努力と研鑽を重ねています」と小玉さんは言います。

“見栄えをよくすることで、味へのハードルは高まるが、それを乗り越えるほど美味しい料理を提供する”。料理人としてのプライドと腕の自信があるからこそ、到達する境地に違いありません。

  • こちらも人気の「カオマンガイ」

最後におすすめしたいのが、デザートの「タイ緑豆ぜんざい」。もやしの種である緑豆をつぶしたものに小豆とタピオカをトッピング、そしてココナッツミルクをかけていただくのですが、これが食べたことのない不思議な食感でクセになる味わい。「これが食べたくて長後から来たよ」というお客さんもいるほど。

  • デザートの「タイ緑豆ぜんざい」

  • ビールグラスもオシャレ!

今はまだ開店したばかりのため、ランチ営業のみですが、いずれはディナー営業を始める予定だとか。今後もますますSNSで拡散され、人気になること間違いなしの「CHAPSTOCK」で、“映え料理”に感動し、“映えを超える感動の美味”に驚嘆してみてはいかがでしょう?

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