155万人が集まる「湘南ひらつか七夕まつり」は未だ進化の過程。 超大型参加型イベントへの道程は“七夕飾りの手作り支援”が鍵!?

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「湘南ひらつか七夕まつり」は、7月上旬の3日間(2018年は7月6〜8日)で155万人以上が平塚に集まる夏の一大イベントです。祭りを支える地域住民との関わりはもちろんのこと、昨年はテニスプレーヤーの松岡修造さんが参加したりと、企業とのコラボ企画も積極的に行っています。祭りを彩る七夕飾りは、10mを超える大型飾りや市民グループが制作を支援している市民飾りなど、湘南スターモール商店街をはじめとした中心街で約500本、市内全域で約2,000本が飾られています。また、かつては街の景観を損なう悩みの種であったゴミ問題も、近年は800人を超えるボランティアの協力を受け、期間中は常時清掃されています。果たして、これだけ大規模なイベントながらも進化し続けているわけとは一体何なのでしょう。現在、七夕飾りの制作支援をしている「一般社団法人 七夕飾り空いっぱいプロジェクト(通称、空プロ)」代表理事の小林誠さん(小林運輸)と理事の田中大輔さん(田中紙店)にお話を伺いました。

七夕飾りの減少が叫ばれている中、生まれたのが空プロ

転機は2011年だった。東日本大震災の影響等による安全対策優先のため、出店(屋台)の数が約半数へ、開催エリアも駅集中型に、さらには開催期間が5日から3日間に縮小された。それまでの行政単独主催も、平塚市と平塚商工会議所、平塚市商店街連合会、平塚市観光協会の合同組織「湘南ひらつか七夕まつり実行委員会」へ変わることに。当時、商工会議所青年部に所属していた小林さんが七夕飾りに関わることになったのも、官から民へと主催が移り変わったことが大きく影響していた。今に続く「空プロ」活動の原型が始まったのも、商工会議所から七夕飾りを増やす「七夕飾り掲出促進対策委員会 委員長」の任を受けた2013年からだったそうだ。

「祭りのメインは七夕飾りなのに、空を見上げると飾りのない空間が目立っていました。最大100本近くあった湘南スターモール商店街の飾りが70本くらいにまで減っていたんです。昔は空いっぱいに飾りがあったのになぁ、そんな声をかつてを知っている方から聞いて凄く寂しかったですし、これは何とかしなきゃって思いましたね」

苦肉の策だった“第三の飾り”が思わぬ救世主に

当時、七夕飾りは企業が数百万円以上を出して業者が制作する豪勢な飾りか、無料で掲出ができる市民飾りなど行政が予算のバックアップを行っている飾りの2つしか選択肢がない状況。期間は短縮されたが飾りに掛かる費用は変わらない。飾りを出す企業は徐々に減り、変わりに無料の飾りが増えていくことに。しかし、予算に頼る無料の飾りを増やすことにも限界はみえていた。そこで浮かんできたのが企業が自分たちでデザインから飾りを作って、自分たちで飾りを掲出する「参加型飾り」であった。

「手作りなら費用も抑えられますからね、苦肉の策です(笑)。ありがたいことにスタートからモデルケースになっていただける企業さんもいらっしゃったので、その会社の社員さんたちと一緒に飾りを作ったんです。やってみて、これはいけると思いました。空プロもそうですが、七夕まつり本来の目的は地域や地元企業さんが元気になってもらうためのもの。手作りの飾り制作がコミュニケーションを深める機会になっていたり、会社全体が盛り上がる一大イベントになっているように感じています」

「七夕飾り空いっぱいプロジェクト」の誕生

3年に渡る小林さんの委員会活動はモデルケースを作り終えたところで任期満了を迎え、支援を引き継ぐ形で「一般社団法人 七夕飾り空いっぱいプロジェクト」を立ち上げた。現在の参加メンバーは運送業を営む小林さんをはじめ、市の職員や学生、職人や商人など約20名。商店街で文具事務器販売業を営んでいる田中さんも、立ち上げから関わっている一人である。

「商店街に自分の店舗があるため、子どもの頃から七夕飾りの制作は身近なところにありました。これまでは商店街の仲間と七夕飾りの制作、掲出支援することもあったのですが、大きな飾りとなると掲出するのは大変です。飾りを作る側・支える側の限界を感じていたところもありました。だから空プロの活動は、これからの七夕まつりに必要な新しい取り組みだと感じています。軽量でデザイン性の高い飾りや、初めて七夕飾りを掲出する方でも気軽に飾れるような飾り、現代の大型飾りなど変化を常に加えていけたらと思っています」

  • 「空プロ」代表理事の小林誠さん

  • 「空プロ」理事の田中大輔さん

参加することで、みんなで楽しめるイベントにしたい

2014年に1本だった参加型飾りは、2017年には9本にまで増加。金額も17万円から制作できる。資材の発注や作り方のアドバイス、デザインなどのコーディネートは、ボランティアで「空プロ」が支えている。風の強い場所、危険性がある場所は掲出ができないという課題なども残っているものの、少しずつ隙間も埋まってきている。

「清掃活動のボランティアが800人を超えて市民参加型になっているように、七夕飾りも様々な手法で盛り上げていけば、ある時状況は一気に変わってくると思います」(田中さん)

例えば参加型イベントのシンボルへと七夕飾りが進化できれば、七夕に参加したい個人・団体の目に止まる可能性は大いに高まる。SNSで個人が情報発信できる今、個性あふれる七夕飾りを世界へ発信することもできるからだ。もっと言えば、来場者が祭りに参加できる仕組みがあってもいい。

「短冊に願い事を書いてもらう活動を毎年商店街さんの運営でやっています。あれって、子どもたちの中でずっと残ると思うんです。だから今年、“子ども七夕飾り”を空プロで用意しました。子どもたちでも簡単に組み立てられるものです。小さな七夕飾りを持って、通りを歩いてもらえたら。“小さな頃に七夕まつりで何か作ったな”、そんな思い出を残してあげたい」(小林さん)

これからも進化を続ける「湘南ひらつか七夕まつり」

戦後まもない昭和26年に当時5万人だった市民の復興を願ってはじまった平塚の七夕まつりは、たくさんの願いが書かれた短冊を掲げて、25万人の街と共に発展してきた。自分たちで作った飾りを見に、家族や友人と一緒に七夕へ行く。そんな風習が、この土地にはもっともっとあっていい。湘南ひらつか七夕まつりは、まだまだ進化の途中なのだ。

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