湘南で暮らす人々

5年ぶりのニューアルバム『JOMON GREEN』をリリースしたCOMA-CHIさんのアーティスティックな葉山ライフ

フィメールラッパーとして、「B-BOY PARK」のMCバトルの女性初のファイナリストといった輝かしい経歴はもちろん、ヘッズ(※)たちが愛し続ける「B-GIRLイズム」とともに、歌声で聴かせるナンバー「Perfect Angel」などのヒット曲を生み出し、独自のスタイルで音楽シーンで活躍し続けるCOMA-CHIさん。そんな彼女が、生活拠点を逗子・葉山へと移し、出産を経て2013年以来、5年ぶりとなるニューアルバム『JOMON GREEN』をリリース! さらに進化し、新境地を開拓した作品と葉山ライフについて、伺いました。

※ヘッズ:HIP HOPに傾倒している人を指すスラング

葉山という場所は、自分の根元を気づかせてくれる

10代の頃からクラブシーンで頭角を現し、HIP HOPからR&B、JAZZYなものまで数々の作品を世に送り出し、ジャパニーズフィメールラッパーの先駆者として活躍し続けているCOMA-CHIさん。葉山へ居住を移し、出産を経て母となり、5年ぶりにニューアルバム『JOMON GREEN』をリリース。アルバム名のパンチはもちろん、青山ときおさんのジャケットも印象的な今作は、イントロを聴いた瞬間、縄文時代からのメッセージを受け取ったような世界観に引き込まれます。

「自然の多い葉山という町で子育てをしながらゆったりと過ごす日常を送っているなかで、これまでのような満たされない思いを吐き出す要素のあるHIP HOPのストリート的なメッセージというのは、自分のなかで少し薄くなっていたんですが、ある日、縄文土器の写真を見る機会があって、その瞬間にグッとくる感覚を覚えたんです。それから調べるようになって、一万年戦争がなかった時代は女性中心の社会だったという説などがあることを知って…。自分のなかで掘り下げていくうちに表現したいことが自然と湧いてきて、音楽にしたいと思い今回のアルバムを作りました」

自然に囲まれた現在の環境がインスピレーションを与えてくれる

アルバムを聴いていると曲の向こうに情景が浮かび、ネイチャーというワードが合うような、偉大なる自然の力強さや生命力を感じることができます。作品のなかのリリック(歌詞)は、娘さんと葉山公園の近くを散歩し、太陽の光や海の音を感じながら降りてくることもあるそうで、自然に囲まれた現在の環境は、アーティスト活動するうえでもすごくプラスに感じているんだとか。

「葉山はとにかく自然が豊かなんです。ミュージックビデオも葉山エリアの山のなかで撮影したものもあるんですよ。山ももちろん多いのですが、海が近く、日々の生活のなかで海とともに過ごせるっていうのがすごく良いんですよね。朝起きたら緑が見えて、散歩したら海の音に触れられて…。すごくニュートラルでバランスのとれた精神状態が生まれていると感じています」

  • 葉山の山中で行ったMV撮影の一コマ

アーティストとしてのみならず、母親としても葉山は魅力的な土地

アーティストとしてはもちろん、子育て世代の働く母親としても葉山での生活は魅力的だと語ります。

「近所にはご高齢の方が多いんですが、すれ違うときに子どもに対して、 “かわいいわね” とか “何歳なの?” なんて声をかけてくれるんです。私はそういう触れ合いってすごく子どもが育つのに大切だと感じているので、地域の人たちと暖かいコミュニケーションがとれるのは本当にいいですよね。今の時代、都会だとなかなか難しいと思うから…。あと、毎週水曜日は渋谷でZEEBRAさんが主催する「WREP」というラジオの収録があり都内へ行くので、東京に出やすいというのも仕事をするうえでは魅力ですね。いつも都内へ行ったタイミングで、仕事の打ち合わせなどをまとめて詰め込んでいます」

  • 2017年6月に行われた「第2回シンデレラMCバトル」でのステージ

都会と自然のギャップに悩む中、見つけた答えが湘南だった

アーティスト、ワーキングマザーとして、葉山ライフを謳歌しているCOMA-CHIさんですが、そもそも葉山へ住むようになったキッカケは何だったのでしょうか。

「地元が葉山の夫との結婚がキッカケで葉山に来たのですが、2011年頃から辻堂に住んでいたので、湘南に来てからは7年くらい経つんです。メジャーで活動していたときは渋谷に住んでいたこともあったんですが、急に年に3回行くほど石垣島や西表島などの沖縄の離島にハマった時期があって…。ビーチなんて全然好きじゃなかったんですけどね〜(笑)。その頃は沖縄と東京のギャップがすごくて、東京に住んでいるのは嫌だな、と感じているときに友人のいる辻堂へ行ったらすごく沖縄の自然と近い雰囲気を感じて、自然と移りましたね」

葉山は良い“気”を感じて自然と集まってくる場所

クリエイターやアーティストが多く集まっていることでも知られている葉山。自身もアーティストとして引き寄せられる部分があるんだとか。

「アーティストって目に見えないエネルギーに敏感な人も多いと思うんですよね。ものづくりをするうえで “自分のエネルギーをクリアな感覚に保つ” っていうのはすごく大事で、“気” っていう言葉があると思うんですが、まさに良い “気” を感じて自然と集まってくる場所なんだと思うんです。昔は都会にいないと情報を知ることができなかったから、東京に集まったけど、今はインターネットで情報をどこでも仕入れられる。むしろ、情報はありあまっている。それより、自分自身とどう向き合って、どう表現しているかっていうのが大切。そういう意味では、葉山は自分自身と向き合え、自分の根元に気づきやすい場所っていうのはあると思うんですよね」

どこにも残っていない縄文の “音” 。正解なんてない自由でクリエイティブな魅力にどっぷり

ニューアルバム『JOMON GREEN』の制作を通して、さらに縄文の魅力にどっぷりだというCOMA-CHIさん。録音で残っているわけのない当時の “音” を自分なりに表現したいそう。

「当時は録音機材がないので、もちろん音は残っていない。だから、正解がないんですよね。そこがめちゃめちゃ自由でクリエイティブだと思っていて、自分が “これが縄文の音だと思うんだよね!” って言ったら縄文の音だし、誰も否定できないっていう…(笑)。有孔鍔付土器(ゆうこうつばつきどき)という等間隔で穴が空いている土器があるんですが、それが何に使われていたのかは不明だけど、太鼓だったという説があって、復元したものにジャンベの皮を貼って縄文太鼓と言っている楽器があって(これももちろん誰も否定できないw)それを叩きながら、フリースタイルとかラップセッションとかもやってみたい、というのはありますね。あと祝詞(のりと)という言葉にも興味があって、昔、宇宙と繋がる韻律で書いていた、とか諸説あるのですが、そういうものも自分の音楽と繋げたいと思っています」

いくつになっても音楽を楽しめる空間を発信していきたい

湘南での音楽活動では、逗子の仲間たちと一緒に不定期でやっているというイベントも話題に。

「単純にいい音楽をみんなでシェアしようというスタンスで「MALIBU JUICE」という、不定期のイベントを逗子の「SURFERS」などで開催しています。湘南ってサーフミュージックやレゲエが根付いているけど、私自身はロサンゼルスのHIP HOPやジャズなどのシーン、ディスコミュージックも大好き。自分も30代ですが、いくつになっても音楽を楽しめる空間っていうのは発信していきたいですね」

  • 逗子の「SURFERS」でのイベント

最後にニューアルバムに込めた思いを聞きました。

「『JOMON GREEN』というアルバムのなかにはメッセージがたくさん詰まっているので、ぜひ聴いてもらいですね。最後の「CIRCLE」という曲は、みんなが階層的なヒエラルキーではなく、円になって作っていく社会が理想というメッセージを込めています。何かにカテゴライズされたり、偉い人がこうと言ってるから!とかそんなことに縛られないで、自分が自分自身に誇りを持っている人たちで繋がっていけたらっていう思いがあります」

葉山の一色海岸のほど近くで生活し、海や緑、自然の力を感じ、ちょっとした変化へ感覚を研ぎ澄まし、音楽へと落とし込むCOMA-CHIさん。『JOMON GREEN』でさらに新境地を開拓し、音楽を追求し続ける彼女の今後の活躍から目が離せません。

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